デジマガ
「情報 」「探求」の科目で活用できる新しいPBL型教育プログラムの提案「10代のデジタルエチケット」
10代のスマートフォン保有率が上がり続ける中、現実とデジタル社会の境界がどんどんと曖昧なものとなっています。デジタル社会のルールは複雑化し、海賊版サイトを不正なものと知らずのうちに何ら意識することなく視聴していることが見受けられるようになりました。
子ども、大人、プロ、アマチュア問わず誰もがクリエイターになれる現代において、デジタル社会におけるコンテンツなどの著作物を実社会と結びつけ、その価値を正しく理解することは、現況において日本コンテンツを保護しクリエイターに正当な利益を還元していくためにも最も重要な課題となっています。
また、高校で「情報Ⅰ」が共通必履修科目になり、2024年度からの大学共通テストで「情報I」が導入される等、同科目で扱う情報モラル、知的財産権に係る理解も重要性を増しています。
このような背景から、ぜひ知ってもらいたいコンテンツが「10代のデジタルエチケット」です。
「10代のデジタルエチケット」WEBサイト
・監修:CODA、STEAM JAPAN 協力:経済産業省
・全国の中学・高校で導入されている。
・無償で、自由に導入可能。
・WEB上の動画教材を用いるため、一人一台端末を利用する等によりオンライン授業でも活用可。
・CODA及びSTEAM JAPAN(監修元)の講師派遣応相談。
<想定している対象>
・実社会や実生活における課題を探究する総合的な探究の時間のご担当者様、情報科、主体的な学びの実践のための教育コンテンツを充実したい教育関係者
・デジタルリテラシー、メディアリテラシー、デジタル・シティズンシップ教育に関心のある方々
・クリエイターを目指す若者、またそのような子を持つ保護者
この記事では「10代のデジタルエチケット」の詳細について、一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構 事業本部 プロジェクト担当部長 湯口 太郎氏にお話を伺いました。
湯口 太郎(ゆぐち たろう)
一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構 事業本部 プロジェクト担当部長
アニメーション制作、高校教諭、国の学生支援政策の運営事業に従事した後、現職。現在は主に日本コンテンツの流通促進事業の一環として海賊版対策をはじめ、コンテンツへの理解促進に対する教育プログラムの開発と実践に取り組む。教育学修士。
教育プログラム「10代のデジタルエチケット」について
−著作権やコンテンツに係る学びを「PBL型の学習プログラム」として開発した理由は?
これまでの著作権教育や情報モラル教育は法律論や「海賊版はダメ」といった「させない・触れさせない」内容が主でしたが、実社会におけるコンテンツとの関わりにおいては、 これらを「知識として知っているレベル」から、「自分ごと」として自らの中に規矩、すなわち自分のコンパスを持っていることが非常に重要です。
『Society5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ』(2022年6月-内閣府 総合科学技術・イノベーション会議)においても、「急速に進む子供たちを取り巻くデジタル社会」の課題に対し、
「自分たちの意思で自律的にデジタル社会と関わっていくためのデジタル・シティズンシップ教育」が必要な施策・方向性として挙げられています。
また、全米メディアリテラシー教育学会(NAMLE)の「Core Principles of Media Literacy Education」(2023)によれば、「メディアリテラシー教育とは、人々がクリティカル思考を持ち、思慮深く且つ効果的なコミュニケーターとなり、情報に基づいた責任ある社会の一員となるために必要な、探求の習慣と表現のスキルを継続的に身につけること」であり、「こうした習慣とスキルを身につけることは、市民生活を送る上で欠かせない」としています。
我が国のコンテンツ産業の流通促進を担ってきた当機構にとって、著作権やコンテンツの重要性に係る理解と学びは、まさに世界中の人々が責任あるデジタル社会の一員として身につけてもらいたい習慣でありスキルであります。 デジタル社会という多様かつ複雑な環境に生きる我々の社会的背景を踏まえ、コンテンツとの関わり方の理解と基本的なリテラシーの学びにおいては「正解を解いていく」だけでなく、 「自ら考え、自分なりの解を導いていく」探求的なアプローチが必要であると考え、PBL型の教育プログラムとして開発しました。
−「10代のデジタルエチケット」の内容とは?
誰もがクリエイターになれる時代、また誰もがオンラインに繋がりデジタル社会に生きる現代において、
目には見えにくいデジタル社会の基本的なエチケットとして
・コンテンツとは?
・著作権、著作物とは?
・海賊版とは?
といった基礎的な知識と背景をアニメーション動画の教材で学びます。その後、様々なクイズやロールプレイ、グループワークにより課題解決のための自分なりの意見を出しながら、他人の権利を守ることの重要性だけでなく、自分自身の問題、自分自身の権利を守ることの視点を得ます。
授業用動画 コンテンツってなに?基礎編
立場の異なるケーススタディとロールプレイングのワーク
また、昨今話題となっているAI生成物の著作権の問題について取り上げるほか、コンテンツを正しく楽しむためのキャッチコピーを作る、というクリエイションの課題を通じて、自らを1クリエイターとして置くことで、コンテンツとは何か、そして日々のコンテンツとの関わり方における倫理や責任、積極的な関わり方についても考えます。
AI生成物について考えるワーク
教材は動画教材とワークシートで構成されており、オンライン授業や自宅学習にも活用が可能です。
授業の実施方法について
−どのように授業に導入すればよいか
各学校のご事情により、探求の時間で少人数の授業を実施したい場合、情報の授業で一人一台端末を活用しながら実施したい場合、リモート授業で活用したい場合などニーズは様々です。
本プログラムはオンライン授業にも対応するため、教材は動画でご用意しております。
リアルの授業で活用する場合は、動画を見せながらところどころで教員の方の問いかけや補足などを挟むと、受動的に教材を見ることを回避できるでしょう。また、グループワークも動画教材内ではThinking Timeが予め一定時間設けられていますが、重点的に取り上げたいワークがあれば、そこに時間を多めに設ける、といった対応も考えられます。
知識を充足する基礎編の動画は自宅で事前に予習として見てくることとし、授業ではグループワークを中心に実施する、ということも可能です。
なお、CODA職員や本プログラムの監修元(STEAM JAPAN)の派遣による授業の実施も可能です(※スケジュール等応相談となります)。日本国内外の最新の海賊版の実態や、最近の事件など、具体事例を交えて授業プログラムを実施いたします。
授業の導入については、教員の方向けにガイドブックもご用意がありますので、お問い合わせください。
高校での実施風景
CODA職員を派遣して授業実施した様子
受講者対象!10代のデジタルエチケット キャッチコピーAWARD2023
~コンテンツを正しく楽しむためにみんなで考えよう!
2023年度は本プログラム受講者を対象に、10月29日(日)に「10代のデジタルエチケット キャッチコピーAWARD2023 ~コンテンツを正しく楽しむためにみんなで考えよう!」というキャッチコピーの全国コンペをオンラインイベントとして行います。 授業内のキャッチコピー制作のワークの成果をAWARDの応募作品とすることができます。
キャッチコピーの審査にはプロのコピーライターのほか、法律家や知財教育の専門家、Z世代を代表する文化人など様々な有識者の方々に参加いただき、優秀賞、最優秀賞については各審査員よりコメントをいただきます。
また、最優秀賞(グランプリ)については、特典として
・受賞したキャッチコピーと考案背景をもとに、プロのクリエイターが30秒の映像化
・プロのクリエイションの世界を学ぶ制作現場訪問のご招待
・2024年1月に開催されるアジア知的財産権シンポジウム2024(日本経済新聞社主催)で映像発表
がなされます。
机上の学びだけでなく、リアルにクリエイションの世界と繋がり、コンテンツの重要性を肌で感じられる機会です。是非奮ってご参加ください。
※AWARDの応募期間は2023年8月31日までとなります。